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書評のようなもの(仮)

SF、ラノベ、漫画、音楽なんかの記事をgdgd書いたり、DTMして遊んだり。

ねじまき少女/ パオロ・バチガルピ

ねじまき少女 上 (ハヤカワ文庫SF)

ねじまき少女 上 (ハヤカワ文庫SF)

 
ねじまき少女 下 (ハヤカワ文庫SF)

ねじまき少女 下 (ハヤカワ文庫SF)

 

今もっともホットな新鋭SF作家の一人として脚光を浴びているパオロ・バチガルピですが、あまり評判が良くないのは何故なんだろうか? そう思いつつあらゆるSF賞を独占した本書を読んでみましたが、評判とは裏腹に斬新な一冊でした。まさに多くの方がいうポスト・サイバーパンクのような猥雑で過激な近未来に圧倒されます。

遺伝子操作がなんらかの影響で伝染病の被害をもたらしているあたり、僕としては、ポスト・サイバーパンクの派生系であるバイオ・パンクという言葉が一番しっくりきます。ですが、石油の涸渇や環境汚染の激化も無視できないほど関係していますし、この言葉だけで世界観を一括りするのは、ちょっと無理があるのかな。とにかく、そうした因子が何重にも重なりあうことで、地球の環境が激変し、人類の生活園が縮小した近未来だということは確かです。

この生活園の縮小度合いが本当に極端で、タイの首都バンコクと一部の島々以外は、環境汚染や伝染病の悪化により人間では生きることさえ困難な状況です。やむを得ず、舞台であるバンコクをそれらの脅威から守り抜くことで、どうにか生活環境を維持してます。まさにガケっぷちといえますが、そんな危機的立場にあっても、各々の利益のために組織や人種で互いに潰しあうという、人間の利己性がムキ出しになったかのような内部抗争にはゾッとさせられます。ストーリー自体もこのあたりを重点に展開していく感じですね。

まあいろいろ書きましたが、個人的には好みです。人類最後の「聖域」さえも必要としない新たな境地をちらつかせるクライマックスとかは特に気に入ってます。環境に適応できない生物が淘汰されるのならば、人類が選択すべし道は「幼年期の終り」でしかないのかもしれない。

幼年期の終り (ハヤカワ文庫 SF (341))

幼年期の終り (ハヤカワ文庫 SF (341))