書評のようなもの(仮)

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ファンタジスタドール イブ/野崎まど

 ラノベ作家・野崎まどの新作。アニメのノベライズと聞いていたので、軽い小説かと思ってましたが、全然違いました。アニメらしさを微塵も感じさせない写実的な文章や、SF的な架空理論をメインアイデアにした本書は、話としても地味で重い。まるで、古めかしい文学に、官能小説と本格SFを融合したような内容でした。

タイトルに「イブ」と題してある通り、これは「ファンタジスタドール」というシステムを開発した研究者達の物語です。デバイスにカードを読み込ませると、可愛らしいドールが現実世界に登場するシーンがアニメにありましたが、まさにその仕組みがどういう経緯で誕生したのかについてが明らかになります。一人の研究者(語り手)の視点からその経緯について独白で語られるので、SF的な話以上に、濃厚な心情描写が特徴的です。

この心情描写がとても繊細で魅力的です。女性と親密になることを拒みながらも、女性の身体を偏愛する、語り手の矛盾めいた心なんかはとくに惹かれます。その矛盾めいた心が抱えるストレスが、のちの「ファンタジスタドール」開発の原動力になってしまうだなんて話は、アニメからではちょっと想像できそうにない。