サイコロジカル/西尾維新
戯言シリーズ4作目。
マッドサイエンティスト・斜道郷壱朗が管理するあやしげな研究所に拘束された天才クラッカー・兎吊木垓輔。彼を救出するため、主人公達がその研究所へ向かう。そして、残酷な事件の陰謀に巻き込まれていく・・・・・・。
今回は、セキュリティ万全の研究所で起こる密室殺人事件を扱ったミステリですが、もっとも衝撃を受けたのは、主人公の推理でも、真犯人でもなく、事件後の後日談だったりします。いかにも、ミステリらしい演出をしておきながら、最後で、それが全部ひっくり返るなんて不意打ちは本当に予想外でした。読者の推理を見事に裏切るナイスな展開だったといえます。あまり詳しくは説明できませんが、本作における事件の謎解きはあくまで目的を達成するための手段でしかありません。言わば、事件そのものがミスリードなのです。
しかも、それがミスリードであると気付いたとしても、すべての謎が解明されるワケではありません。読み終わったあとも、モヤモヤした部分がいくつも残って煙に巻かれたような気分にさせられます。こんなことがアトガキに書いてありました。
“美しい論理ってのもいーけどそれだけじゃつまんないし、もっとこう思い切った矛盾にばびっと存在して欲しいものです。”
前シリーズ(1、2、3作目)もずいぶん思い切ったミステリでしたが、どれも納得のいく「答え」があったのです。今巻は、その「答え」をブン投げて物語に矛盾をつくりだすという著者の新たな取り組みが垣間見れる一冊でした。一体、何のためにそんなことしたのかといいますと、さっき引用したように「つまんなかったから」ではないかなと。 表紙カバーのそでに書いてある文章が面白かったのでもう一つ引用してみます。
“心理学は勉強すれば勉強するほど
煙に巻かれていくような学問ですが、
よく考えてみれば
人生において大抵のことはそうです。
他人の気持ちが知りたいなんてのは、
シチューが美味しかったから
鍋を食うようなものだと思います。 ”
つまり、今回のお話は鍋なんて美味しくないのでシチューのみを味わって下さいといったようなものかもしれません。変なこと書いてたらごめんなさい。