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書評のようなもの(仮)

SF、ラノベ、漫画、音楽なんかの記事をgdgd書いたり、DTMして遊んだり。

みずは無間/六冬和生

SF

みずは無間 (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)

 去年開催された第1回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作。世界に通用する大型SF新人作家の発掘を目的とした賞だそうです。コレの他にも最終候補に残った『テキスト9』『オニキス』『ファースト・サークル』は順次、刊行予定になるそうですので、そっちも期待してますが、まずは本作から。

読後の素直な感想としては「なんだこりゃ!」の一言でした。この物語をどう説明すれば良いのか迷いますが。身も蓋もなくまとめると、主人公(雨野透)とヒロイン(みずは)の不仲な恋人関係のいさかいが、やがて全宇宙をも吞み込む大惨事に発展する超ド級の恋愛SF×破滅的セカイ系といったところでしょうか。

彼等が、どのくらい不仲な恋人関係かといいますと、主人公が地球から逃げ出すほどヒロインのことを嫌っています。正確には、宇宙探査機のAIに自身の人格をコピーして宇宙に脱出するのですが、とにかく、それくらい彼女のことを疎ましく思っていて、物語の最初もそこから始まります。

そして、宇宙に逃げ出した主人公は、恋人であったことを忘れ果てしない宇宙を永劫に漂い続ける……わけではなく、何かある度に彼女のことを思い出し、悶々と苦しむハメになります。自身の記憶にこびりついた地獄のような彼女との思い出をどうにか削除できないか考えた主人公は、またもやとんでもない行動に出る。その結果が巡り巡って自身に返ってくるとは知らずに……。

 食いしん坊でワガママでしつこく主人公を求め続けるヒロインの飽くなき欲望も凄まじいのですが、ヒロインを徹底的に忘れようとする主人公の根に持ちようも凄い。どれだけ求めても満たされることなく肥大してゆく「人間の欲望」をSF的におぞましく描いた物語でもあるのですが、理解できないものを嫌悪するあまりいつの間にかその人の存在が悪の権化のようになってしまう、そんな人間の心理を捉えた作品でもあるように思います。

上記に書いたようなささいなキッカケが、宇宙的事象に結びつくクライマックスはなかなか衝撃的ですし、エンタメ的な楽しさも味わえる一冊だと思います。

ファースト・サークル (ハヤカワ文庫JA)

ファースト・サークル (ハヤカワ文庫JA)